ゼロトラスト(Zero Trust)

カテゴリ: セキュリティモデルと戦略

ゼロトラスト(Zero Trust)とは、「決して信頼せず、常に検証する(Never Trust, Always Verify)」という原則に基づいた、現代のサイバーセキュリティにおける革新的なセキュリティモデルです。従来の「境界型防御」の限界を克服するために生まれました。

ゼロトラストの背景と必要性

従来のセキュリティ対策は、社内ネットワーク(内側)とインターネット(外側)の間にファイアウォールなどの「境界」を設け、一度内部に入れたユーザーやデバイスは「信頼できる」ものとして扱う「境界型防御(Perimeter Security)」が主流でした。しかし、クラウドサービスの急速な普及、テレワークの拡大、モバイルデバイスの多様化により、「境界」の概念が曖昧になりました。

2020年以降のパンデミックにより、リモートワークが常態化し、従業員が自宅や外出先から企業リソースにアクセスすることが当たり前になりました。この変化により、従来の境界型防御では、内部ネットワークへの侵入を許すと被害が一気に拡大するという深刻な課題が顕在化しています。

ゼロトラストの基本原則

ゼロトラストモデルでは、以下の原則に基づいてセキュリティを構築します:

  • 常時検証:アクセス元が社内か社外かに関わらず、すべてのアクセスリクエストに対して、ユーザー認証、デバイスの健全性、アクセスの正当性を厳密に検証
  • 最小権限の原則:必要最小限の権限のみを付与し、過剰なアクセス権を排除
  • マイクロセグメンテーション:ネットワークを細かく分割し、仮に侵入されても横方向への移動(ラテラルムーブメント)を制限
  • 継続的な監視:アクセス許可後も継続的にユーザーの行動を監視し、異常を検知

ゼロトラストの実装技術

ゼロトラストを実現するためには、複数の技術を組み合わせて構築する必要があります。主要な技術要素として、ID管理(IAM:Identity and Access Management)による統合的なアイデンティティ管理、多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)によるパスワード以外の認証要素の追加、EDR(Endpoint Detection and Response)によるエンドポイントの常時監視、そしてSASE(Secure Access Service Edge)によるネットワークセキュリティとWAN機能の統合があります。

導入における課題

ゼロトラストの導入には、既存システムとの統合、従業員の教育、コスト面での投資など、多くの課題が伴います。段階的な導入アプローチを採用し、最も重要な資産から保護を開始することが推奨されます。Gartner社の調査によると、2025年までに大企業の60%がゼロトラスト戦略を採用すると予測されています。